アニメーション研究家の氷川竜介氏からコメントが到着しました!

「モンスト」アニメ展開の意義

 氷川竜介(アニメ研究家/明治大学大学院客員教授)


 1963年のTVシリーズ『鉄腕アトム』の成功でTVメディアを主戦場にアニメが量産されるようになって半世紀余り。ハイコストのアニメ制作を支えるビジネス構造も時代とともに変化していった。「モンスト」のアニメ展開は、その最先端ではないだろうか。

 60年代はキャラクターをつけた菓子などの二次商品が中心で、70年代にロボットなど玩具販売目的のオリジナル作品を放送する形態が加わった。80年代では作品それ自体を売るOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)がスタートし、21世紀に入ると深夜帯でTVアニメ(事実上のOVA)を放送し、DVD等のセールスで回収するため複数企業が出資する製作委員会システムが主流となった。しかしパッケージビジネス全体が世界的に低迷化した結果、近年はアニメに行き詰まり感が漂っている。

 そんな状況下で、「モンスト」のアニメ展開には現状を打破するパワーが感じられ、要注目だ。次世代の可能性を開拓する新たな試みが多く含まれているからだ。

 ミクシィ、一社でハンドリングを行い、タイトルの価値を高めていること。ゲームアプリの動作するスマートフォンと地続きのYouTubeによる無償配信を選んだこと。時間リソース不足気味のユーザーに配慮し、1話7分(TVアニメの約3分の1)という短さとしたこと。メインとなるアプリとアニメはアイテム提供等で連携し、しかもユーザーからのフィードバックにも迅速な対応を可能としたこと等々......。

 ゲーム、SNSと同じマルチプレイ、インタラクティブといった要素がアニメに持ちこまれれたとき、次の進化が始まるはずだ。そしてYouTubeアニメの成功をきっかけに、「モンスト」は劇場映画にも進出するという。散りばめられてきた伏線の謎解きや人間関係の奥深くに潜むものの掘り下げなど、郷愁あふれる過去の世界では、どんな物語が待っているのだろうか。劇場アニメのあり方を変えるかもしれない新展開に、期待したい。